Gd/Cu多層膜中のCu層の磁気分極

 Coのような強磁性金属とCuのような非磁性金属を積層して多層膜を作る。Co層に接したCu層は非磁性のままかどうか?20年前の常識では、界面第一層のCu原子にごく小さい磁気モーメントが発生するが、内部のCu原子には変化がないと考えられていた。10数年前に、厚さ数nmのCu層を通してCo層が磁気相互作用し、Cu層を挟んだCo層の磁気モーメントが反平行に配列する現象が見つかった。また、これに関連する現象として巨大磁気抵抗効果が発見された。その後、多くの非磁性遷移金属や貴金属が強磁性層を相互作用させることが分かった(間接交換結合)。数nmの膜厚の非磁性層はどのようにして磁気相互作用を伝達するのか?強磁性層の磁気モーメントの配列や大きさが変化したとき、非磁性層の電子状態はどう変化するか?強磁性層の大きな磁気モーメントのため、非磁性層に弱い磁気分極が発生しても、それを検出することは容易ではない(中性子線散乱などでは検出できない)。原子の吸収端で起きるX線円二色性磁気吸収(XMCD)や共鳴X線磁気散乱には元素選択性がある。この特徴を利用すれば、非磁性層の弱い磁気分極を調べることができる。 本講座ではGd/Cu多層膜中のCu層の磁気分極を研究している。左図は温度20−135 Kで測定されたCu K吸収端のX線磁気円二色性(XMCD)スペクトルである。20 K においてΔμt/μtjump値が0.3%に達する複雑な形状のスペクトルが観測されている。この値は、Co/Cu多層膜中のCoと同程度の大きさであり、Gd/Cu多層膜中のCu 4p電子が強く磁気分極していることを示す。さらに詳細を調べるため、共鳴X線磁気散乱実験を計画している。



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