連絡先

岡田豪 助教 
奈良先端科学技術大学院大学 
物質創成科学研究科 
センシングデバイス分野 
〒630-0192 奈良県生駒市高山町8916番地の5
go-okada at ms.naist.jp

研究紹介


私は、放射線計測を目的としたガラスや結晶などからなる蛍光体材料の開発およびその応用について研究を行っています。一般的に、このような蛍光体材料はレントゲン写真、CT、PETなどの医療イメージング技術、空港などで用いられるセキュリティ、環境放射線モニタリング、宇宙物理学、核科学などに応用されます。以下に、私の具体的な研究内容について紹介します。

マイクロビーム放射線治療用RPL検出器の開発

次世代の放射線治療として期待されるマイクロビーム放射線治療(Microbeam Radiation Therapy (MRT))に用いるX線を高精度で計測する為の検出材料を開発しています。 image right MRTでは,右図のように約100からなる微小かつ平面的構造をもつX線ビームをアレイ状に並列させたマイクロビームを患部に照射します.一般的に各微小ビームは20-100 µmの幅を持ち,その間隔は200-400 µmと非常に微小な構造を持ちます。また、マイクロビーム中には線量は各微小ビーム中心でおよそ数百から千Gy(ピーク線量),その間で20 Gy以下(谷線量)のX線量が分布しています。ここで、一般的な放射線治療に用いられる放射線量は最大で50 Gyとされていることから、MRTでは非常に高い量の放射線が局所的に分布している事が特徴です。したがって,マイクロビーム断面中に分布する線量の計測には(1)高線量(1 – 1000 Gy)および(2)ミクロの空間分解能力の両条件を満たす技術が必要です.しかし,これらマイクロビームの特殊性から現存するX線検出手法では線量分布検出が困難である為,私たちは上記条件を満たす新しい手法を提案しいます.

私たちの提案する手法では,RPL(Radio-Photoluminescence)材料と呼ばれるものをX線量分布を記録する媒体として用います。RPLとは、その材料中に放射線を照射することにより蛍光スペクトルが変化する作用の事を言います。3価サマリウム(Sm3+)イオンをドープした媒体をX線の記録検出材料として用います.Sm3+は特定の物質内においてX線照射によりSm2+へ還元し,この還元の度合いに伴う蛍光スペクトルの変化を線量の指標として用いる.さらに,この指標を共焦点顕微鏡を用いる事により,高分解能でX線の分布の読取りを間接的に検出する.

レントゲン撮影用(X線イメージング用)蛍光体の開発

レントゲン撮影(X線イメージング)は、医療用診断装置や空港の荷物検査機など非破壊で対象物の内部を除く為の用途に広く使われています。 image right X線などの放射線は目で直接見る事ができませんが、蛍光体を用いる事により間接的に見える状態に(可視化)する事ができます。ここで、蛍光体は目に見えない放射線を目に見える光(可視光)やその他紫外線や赤外線など光に変換する役割を持っており、この光を一般的なカメラなどの光検出器を用いる事によって計測(撮影)する事ができます。すなわち、蛍光体を用いる事により放射線を間接的に検出する事が可能となります。

これら蛍光体の種類は多種多様であり、放射線に対する振る舞いの違いから大きく「シンチレータ」と「ストレージ蛍光体」の2種類に分ける事ができます。シンチレータとは、放射線が当たった瞬間に(当たっている間だけ)光に変換してくれる蛍光体の事を指します。一方で、ストレージ蛍光体は、一時的(もしくは半永久的)に照射した放射線情報(強度やその分布)を記録できる蛍光体の事を指します。