NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科 ~光ナノサイエンス~

エネルギー変換科学研究室の片岡幹雄教授が日本中性子科学会賞を受賞

エネルギー変換科学研究室の片岡幹雄教授が日本中性子科学会から第9回学会賞を授与されました.つくばで開催中の第1回アジアオセアニア中性子散乱会議の中で,11月22日(火)に授賞式と受賞講演が行われました.日本中性子科学会は,中性子科学の発展に著しく寄与した者の功績をたたえるため,功績賞,学会賞,奨励賞,技術賞の4つの賞を設け,毎年授与しており,今年が9回目になります.学会賞は,中性子科学の進歩発展に寄与し,その業績が顕著な者に対し授与されることになっています.

中性子生物物理学(中性子非弾性散乱による蛋白質の動力学の研究ならびに中性子結晶構造解析によるイェロープロテインの水素結合ネットワークの性質に関する研究)

片岡幹雄氏は,我が国における中性子生物物理学の指導的立場にある研究者である.特に日本で本格的に中性子非弾性散乱を用いた蛋白質分子のダイナミクスの研究を開始し,世界に比肩するまで研究レベルを引き上げたことは特筆に値する.ここに至る業績を簡単に述べる.蛋白質の精度のよい中性子非弾性散乱スペクトルを測定し,基準振動解析と合わせて,この方法が蛋白質動力学解析の新しいツールとしての利用できることを示した.蛋白質のボゾンピークの起源について,分子内の2次構造に由来する説を完全に否定し,分子全体に広がったモードであることを明らかにし,水和によって蛋白質分子の調和的性質が硬くなり,かつこれが水和率に対し線形であることを明らかにした.また,蛋白質分子の動力学転移を詳細に解析することにより,動力学転移の水和率依存にしきい値の存在することを明らかにした.また,しきい値の起源を明らかにし,蛋白質機能と水和水ダイナミクスの関係を明らかにしている.中性子結晶解析によって,イエロープロテインの全912個の水素原子のうち849個を決定した.これにより水素結合網を詳細に検討し,発色団と特定のアミノ酸の間の特異な水素結合(低障壁水素結合)を見出した.低障壁水素結合の発見は,タンパク質においては世界初である.また,この発見は,46番目のアミノ酸がプロトン化し発色団が脱プロトン化しているとするこれまでの説を完全に否定したため,この説に基づいていたこれまでの全ての実験結果の解釈の変更を求めるほどの大発見である.これまでの説に代わり,低障壁水素結合から通常の水素結合への緩和という光受容蛋白質の光反応初期過程の新しい生理学的プロセスを提唱した.さらにこの研究を進めるにあたって,1.5Å分解能という中性子解析での世界最高分解能を達成し,このデータとX線結晶構造解析データを併用した信頼性の高い分子構造精密化方法を提示した点も特筆される.
以上のように,片岡氏は中性子非弾性および弾性散乱を有効に使い,蛋白質分子の物性物理研究を推進し生理学的機能との関連を提示した.これは中性子科学の進歩発展に大きく寄与し,これらの業績は日本中性子科学会「学会賞」に値する.

このたびは中性子科学会学会賞を受賞することができ,大変光栄なことと思っています.中性子科学会は分野融合的な学会で,基礎物理学,物性物理学,高分子科学から生物・医学までの広い範囲をカバーしていますが,その中でも物性物理学が強い学会です.そのような中で,私の仕事を評価していただき,推薦してくださった方,選んでくださった方がいらっしゃったということに感激しています.また,授賞対象となった仕事は,ほとんどが本学に着任して以降のものなので,本学が評価されたものとも思っています.これまで,ご協力いただいた研究室のスタッフ,卒業生,学生の皆さん,世界各国に広がる共同研究者の皆様,またご支援いただいた先生方に深く感謝いたします.これからも中性子生物物理学のみならず生物物理学の発展に寄与していきたいと思っています.

エネルギー変換科学研究室のホームページはこちらをご覧ください.

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