私達が開発している分離材料は、分子レベルでの相互作用の違いを利用して、目的の化学種を選択的に効率よく抽出することを可能にします。 そのような機能を持つ材料の分子構造を設計するうえで、計算化学が大きな役割を果たしています。
例えば、二酸化炭素を分離する材料の開発においては、アミンと二酸化炭素との相互作用が最も頻繁に利用されます。 アミンは窒素原子に3つの置換基を持ち、その組み合わせによって膨大な種類があり、それら全てを実験で評価することは現実的ではありません。
計算化学は、実験室で実験を行うことなく材料の性能を予測することで、材料開発を効率化する有用な手法を提供します。 さらに、実験的手法では検証が難しい反応機構の解明などにおいても力を発揮します。
図1は、量子力学に基づく計算で見出された、二酸化炭素がアミン水溶液に吸収され重炭酸イオンが生成する際の遷移状態構造です。 反応系から遷移状態を経て生成系に至る反応経路の量子力学によるエネルギー解析は、二酸化炭素を選択的に吸収する各種性能(溶解量、吸収速度、吸収熱)とアミン構造との関係を明らかとします。 私達は、そのような解析から、適用条件に応じたアミン分子の構造を設計しています。

図 アミン水溶液による二酸化炭素吸収反応の遷移状態

計算化学を用いた材料開発

環境適応物質学研究室

公益財団法人 地球環境産業技術研究機構(RITE

連携研究室

奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科