分子の吸着現象は、吸着剤とゲスト分子との間に働く相互作用(分子間力・結合力)の強さに依存します。ゼオライト系吸着剤の場合、
ゲスト分子を取り込むのに必要な強い相互作用が期待できる細孔構造・細孔径を持ったゼオライトを選定し、吸着剤として利用します。
ゼオライトのフレームワークは熱運動/伸張性が低いことから、その細孔径も固有の値を示します。
それに対して、結晶材料にも関わらず固有細孔径を持たない多孔質材料が存在します。これは、金属イオンと有機架橋配位子の自己組織化を利用して得られる錯体結晶、
総称してMOF(金属有機構造体/Metal-Organic Framework)と呼ばれるもので、MOFの中にはゼオライトのような規則的なナノ細孔を持ちながら、
有機高分子のような柔軟性を有するものが存在します。
当研究室では、この柔軟な構造を持つMOFをガス分離に応用する研究を行っています。柔らかいMOFにCO2などのガスを接触させると、ある気圧を境として、
結晶の体積を膨らませ、あたかも「ゲートを開いた」かのように、急激にガスを取り込むことが知られています(図)。このゲート吸着現象を上手く利用した場合、
ほんの少しの圧力変化で、多量のガスの吸着・脱離を繰り返せるため、従来の吸着材よりも省エネルギーなガス分離が行えると期待されます。
私達は、柔らかいMOFに二種類以上の混合ガスが接触した場合の吸着挙動の実測と分子シミュレーションによる解析を行っており、
優れた性能を示すMOFの設計指針を構築し、分離プロセスへの応用を確立することを目標として研究を行っています。
MOFの研究開発
環境適応物質学研究室
公益財団法人 地球環境産業技術研究機構(RITE)
奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科