ICL(集積化化学実験室)
   近年、マイクロマシニング技術を用いて基板上に高精度な微細加工を施すことによって、送液・混合・反応・分析といった一連の機能を一枚のチップ上に集積する研究(LOC:Laboratory on a Chip,μTAS: Micro Total Analysis Systems)が盛んに行われています。マイクロマシニング技術とは、フォトファブリケーション技術を応用することにより、シリコンやガラス基板上に高精度な三次元一括加工を行う技術であり、設計の自由度が大きいことから、複数の機能を一枚の基板上に作成することが可能です。近年の精力的なLOC・μTASの研究により、基板上にバルブ、ポンプ、ミキサー、リアクター、分離部、検出部などの集積が実現されつつある。その特徴は、サンプルや試薬の使用量を低減できること、反応や分析の高速化が図れること、装置の小型化が可能であるため医療、環境、化学工業分野などで要求される科学操作のオンサイト化が可能なことなどです。そして、これらの本質は単たる技術のミニチュアライズやダウンサイジングによる物量の削減効果を狙うことに本質があるのではなく、重要なことは、マイクロチップに化学システムを集積化することにより、化学現象としてどのような新規な効果が現れ、それを新しい方法論としてどのように活用していくかということにあると考えています。
 私たちは、今、これらの技術を有機合成分野に応用しマイクロチップ上で有機合成反応を行う研究に着手しています。効率的な合成を達成するためのポイントは試薬の混合をいかに効率良く行わせるかにあるという観点で、幾つかの混合機構を有するマイクロチップをシミュレーション検討し、その結果を基に数種類のチップを試作し実際にそのチップ上で反応効率の評価を実施した。反応効率の評価には、TLC(薄層クロマトグラフィー)と画像処理ソフトウェア(NIH image)を用いています。
 今後は、マイクロリアクターを用いた微小空間中での合成反応についての知見を得ていくことと共に、分析装置等の集積化などなど、未だ未開拓な分野へ挑戦していこうと考えています。







*この図は、当研究室が参加しているKAST(神奈川科学技術アカデミー)のICLプロジェクトからの引用です。






今までの研究テーマの流れ

平成10年4月 感覚機能素子化学講座及びICLプロジェクト発足
1期生 OB(平成12年3月卒業) 明地 将一 混合機能を有したマイクロチップの作製とそれを用いた有機合成反応 混合効率の高い多層拡散型チップの開発
TLCを用いた反応収率評価法の発案
2期生 OB(平成13年3月卒業) 月森 一如 マイクロリアクターを用いた有機合成反応と反応収率評価法に対する研究 マイクロリアクターを用いた有機合成反応
反応収率評価法の最適化
3期生 M2 橋本 竜之