物性情報物理学研究室(旧:凝縮系物性物理学研究室)
教員・キャッチフレーズ
教授:松下 智裕
准教授:服部 賢
助教:武田 さくら
助教:橋本 由介
助教:重城 貴信
特任助教:山本 裕太
研究室URL:https://mswebs.naist.jp/LABs/surface-material-physics/index.html
原子配列と電子構造を見る最先端技術として、光電子ホログラフィー、電子回折トモグラフィー、光電子分光、走査トンネル顕微鏡などを開発し、得られたデータに対して情報理論を駆使して、先端機能性材料の機能解明を目指した研究を行っています。
研究を始めるのに必要な知識・能力
半導体・金属などの固体物性に関する基礎知識(結晶構造・エネルギーバンドなど)が望ましいですが、必須ではありません。新しい測定技術による表面科学・電子分光に挑戦する意欲と知的好奇心をもった学生を歓迎します。
研究室の指導方針
配属学生には、超高真空操作、表面試料作製、表面観察手法を指導します。装置の操作だけでなく、装置の設計や組立など装置作りの本質を伝授します。物性物理の教育、更には新型装置の開発や大型先端研究施設での実験などを通じて、先端機能材料の原子配列やその物性の発現する電子構造の解明を、情報理論を用いたデータ処理を行ってチャレンジしてもらいます。研究テーマはできる限り希望を考慮し状況に応じ柔軟に対応します。
この研究で身につく能力
新しい物理現象を見るための研究手法や装置開発を通じて、将来、どのような道に進んでも、さまざまな装置を開発できる能力が身につきます。実験技術として、装置設計、超高真空、ガス分析、表面作製、蒸着、ガス暴露、加熱、低温、電子回折、X線回折、光電子分光、走査トンネル顕微鏡、電気伝導、磁化測定、発光分光、ラマン分光などを習得できます。データ解析を通じて、固体物理学、UNIX、第一原理計算、Python、C++、LabVIEWなどの能力が身につきます。また、就活に有利な表面科学技術者資格も得られます。
修了生の活躍の場
修士卒:主に電気機器製造業の研究技術者・最近6 ヶ年では、キーエンス、東京エレクトロン、トヨタ、ルネサス、HOYA、NTT、SOLIZE、オムロン、コベルコ、シンプレックス、フジクラ、リクルート、リコー、ルネサス、ローム、花王、京セラ(2)、高純度化学、四国電力、住友電工(2)、住友電装(3)、村田製作所、太平電装、中部電力、日本モレックス、日立(3)、浜松ホトニクス、富士通、堀場製作所(2)。他に 他大学への進学:大阪大学、ユーリッヒ研究センター。
博 士 卒:主 に ア カ デ ミックの 研 究 者(ポ ス ドク、 助 教 など)。 最 近6 ヵ 年 で は、Lund大 学(MAX IV)、アー ヘン 工 科 大 学、International Islamic University Malaysia、NIMS、岡山大、名工大、大阪大、奈良先端大、米子高専、日経BP、Bollhoff、ユニソク、マイクロメモリジャパン、東京エレクトロン。
研究内容
【目的】 機能性材料を作製する際には、母材に微量な元素を添加(ドーピング)したり、表面に原子を吸着・堆積する手法がよく用いられます。これらの添加した原子が形成する原子配列構造は物性に大きく関わっていますので、原子構造の可視化が材料開発の鍵となります。しかし、従来の測定法だけでは見ることはできません。当研究室では材料科学に技術革新をもたらすべく、この微量な添加原子の構造を可視化する実験装置を開発し応用する研究を行っています。【研究テーマ】
1. 半導体デバイス(シリコン、ダイヤモンド、SiC、グラフェンなど)や酸化物超伝導体などのドーパント 2. 金属シリサイド 3. 歪み半導体ナノ薄膜系 4. 触媒デバイスを目指した吸着分子反応制御 5. 境界を作らないナノ薄膜の新成長法 6. 低次元結晶の電子状態 7. 電子格子相互作用 8. 表面構造の非線形振動現象 9. 立体構造表面上記の物質を対象として、下記の研究手法で物性発現機構の機能解明に迫ります。
1. 大型放射光施設SPring-8を利用した光電子ホログラフィーによる物質中の
ドーパントの原子構造解析
2. 機械学習と散乱の量子論を組み合わせた、ホログラムからの立体原子像再生
理論研究
3. 反射型高速電子線回折による逆格子空間マッピングよる表面原子構造解析
4. 表面・ナノ薄膜の作製と走査トンネル顕微鏡、低速電子線回折、質量分析に
よる解析
5. 角度分解光電子分光と密度汎関数法理論計算による電子構造解析
6. ラマン分光とカソードルミネッセンスによる格子歪と発光機構解析

大型放射光施設SPring-8(上段)にて開発している光電子
ホログラフィー用の電子エネルギー分析器。電子飛跡追
跡計算による設計と装置作成

モンド中のリン原子の構造。2つの化学
状態があり、置換構造と2つの空孔の中
心にリン原子が位置する構造を実測[1]。

表面の走査トンネル顕微鏡(STM)
像。一つ一つの輝点が原子。

コン反転層中の量子化電子状態のサ
ブバンド分散[7]。
研究設備
超高真空試料作製測定装置(3台)、走査トンネル顕微鏡(STM)、角度分解光電子分光(ARPES)、オージェ電子分光(AES)、反射高速電子線回折(RHEED)、低速電子線回折(LEED)、脱離質量分析(TPD)など。光電子ホログラフィーなどの原子分解能ホログラフィー測定装置は大型放射光施設SPring-8にて設置。
研究業績・共同研究・社会活動・外部資金など
[1] T. Yokoya, T. Matsushita, et al., Nano Lett. 19, 5915(2019).[2] K. Tsutsui , T. Matsushita, et al., Nano Lett. 17, 7533(2017).
[3] K. Hayashi, T. Matsushita, et al., Science Advances 3,
e1700294 (2017).
[4] A. Irmikimov, K. Hattori, et al., ACS Cryst. Growth Des. 21,
946 (2021).
[5] N. Hirota, K. Hattori, et al., Appl. Phys. Express 9, 047002 (2016).
[6] O. Romanyuk, K. Hattori, et al., Phys. Rev. B 90, 155305 (2014).
[7] S. N. Takeda et al., Phys. Rev. B 93, 125418 (2016).
[8] 科研費 学術変革領域A「超秩序構造が創造する物性科学」(R2-R6年度)
[9] 科研費 挑戦的研究(開拓)(R3-R6年度)、基盤研究B(R2-R4年度)