光情報分子科学研究室の久野純平さん(博士後期課程3年、日本学術振興会特別研究員DC2)らの研究論文がアメリカ化学会Chemistry of Materials誌の表紙(Supplementary Cover)に選出されました。
論文の概要
朱肉の原料としても知られる辰砂晶(硫化水銀)は構成原子が右または左巻きのらせん状に配置される結晶(キラル結晶)を有します。自然界には左右のキラル結晶が等量存在しますが、ナノメートルスケールの粒子(ナノ粒子)の合成においては、キラルな有機分子との相互作用によりいずれかの巻き方向のキラル結晶を選択的に合成することが可能です。今回の研究ではナノ粒子の生成・成長過程において、結晶のキラリティー純度が向上していく機構を発見しました。初期段階では、左右のキラル結晶が混在して生成しますが、キラル分子との相互作用により、いずれかのキラル結晶がより安定化され、より不安定なキラル結晶は原料へと分解し、安定なキラル結晶の成長を促進します。これはアミノ酸などのキラル化合物の動的優先晶出に伴う不斉増幅現象として知られていましたが、今回はじめて、ナノ粒子のキラリティー選択的生成機構として提唱することができました。本研究成果は、不斉触媒など様々な応用の可能性を秘めたキラルナノ粒子の高性能化に貢献すると期待されます。
Chemistry of Materials誌上発表論文へのリンク
https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acs.chemmater.0c02409
掲載号(32巻19号)へのリンク
https://pubs.acs.org/toc/cmatex/32/19
論文タイトル
Enhanced Enantioselectivity in the Synthesis of Mercury Sulfide Nanoparticles through Ostwald Ripening
著者
Jumpei Kuno, Kazuhiro Miyake, Shohei Katao, Tsuyoshi Kawai, and Takuya Nakashima
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