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凝縮系物性物理学研究室の松下教授が執筆した研究論文が応用物理 Vol.89 No.9の表紙(front cover)に選出されました。

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論文の概要

母結晶に不純物を添加して物性を制御するドーピング技術は現代科学において普遍的に利用されている。ドーパントは母結晶の中で様々な原子配列を形成するが、目的の原子配列を形成できなければ目的の性能は得られない。今まではドーパントの原子配列を解く手法が存在しないため、様々にドーピング条件を変えながら、手探りで最適条件の探索が行われてきた。光電子ホログラフィはドーパントから放出された光電子を観測することで、ドーパントの立体原子配列の直接観察を可能にする。この測定技術をヒ素ドープのシリコンとリンドープのダイヤモンドに対して適用した結果を報告する。両サンプルともに、ドーパントは複数の価数状態が存在し、それぞれの価数で異なる原子配列になっている事が分かった。ここから、原子配列と電荷キャリア数との関連や、結晶成長過程でのドーパントの挙動などの情報が得られた。

発表論文へのリンク
https://doi.org/10.11470/oubutsu.89.9_519

論文タイトル

光電子ホログラフィによる半導体中のドーパントの立体原子配列の可視化

著者

松下 智裕

受賞対象となった研究の内容

母結晶に不純物を添加して物性を制御するドーピング技術は現代科学において普遍的に利用されている。ドーパントは母結晶の中で様々な原子配列を形成するが、目的の原子配列を形成できなければ目的の性能は得られない。光電子ホログラフィはドーパントから放出された光電子を観測することで、ドーパントの立体原子配列の直接観察を可能にする。我々は、光電子ホログラムを観測できる専用装置を大型放射光施設SPring-8のBL25SUにて開発し、この測定技術をヒ素ドープのシリコンとリンドープのダイヤモンドに対して適用した。両サンプルともに、ドーパントは複数の価数状態が観測された。我々はそれぞれの価数のドーパントの周囲の原子配列を反映した光電子ホログラムを分離して得ることに成功した。測定した光電子ホログラムに対して、量子散乱理論とスパースモデリングを組み合わせた独自の解析理論を用いて、立体原子像へと再構成した結果、それぞれの価数で異なる原子配列になっている事が分かった。置換サイトの位置に存在しないドーパントは電荷キャリアを放出しないことから、原子配列と電荷キャリア数との関連が示唆された。また、ドーパントの非対称な占有率も観測され、ここから結晶成長過程でのドーパント原子の挙動などの情報も得られた。


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