機能有機化学研究室 荒谷研

We focus on the development of functional organic materials including organic semiconductors, highly fluorescent dyes, near-infrared (NIR) dyes, and carbon nanomaterials.


We are fascinated by beautiful and huge organic structures with high symmetry.

Research

構造有機化学

世界を驚かす機能性有機材料の創成にチャレンジ!

ピレンに基づく高次ナノカーボンの構築と光機能の開拓

分子性ナノカーボン構築のためにベンゼンよりも迅速に共役を広げられるピレンを出発基質として、より一般的な機能性ナノカーボンの合成を目指している。ピレンの反応性を理解して多様な高次構造を組み上げ、zig-zagエッジをもつナノグラフェンとしてテトラベンゾペリペンタセンを合成した。導入した置換基の立体効果により天然にはないβ型グラファイト (ABC) 積層構造を達成した。この研究の過程で、シンプルながら未報告だったピレンおよびペリレンのジカチオンの結晶構造を初めて得ることに成功し、二電子酸化によって芳香族性の位置が移ることを実験的に明らかにした。また、その後の展開として環状ピレン多量体 (319量体) を構築した結果、環状三量体が高歪みによりピレン類縁体として最長蛍光波長 (600 nm) を達成し、光増感作用により発生した一重項酸素と反応してビアリール間に酸素が挿入することを見出した。金属を用いないアリール基間の初めてのC-C開裂反応である。また不斉炭素を有さない環状5量体が奇数であるため余儀なく不斉を誘起し、中程度の非対称因子g(±1.0 x 10-3) を示すCPL特性と素早いラセミ化 (20 kcal/mol) などユニークな特性を明らかにした。

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Tetrabenzoperipentacene: Stable Five-Electron Donating Ability and a Discrete Triple-Layered β-Graphite Form in the Solid State

A. Matsumoto, M. Suzuki, D. Kuzuhara, H. Hayashi, N. Aratani,* H. Yamada*

Angew. Chem. Int. Ed., 2015, 54, 8175–8178.

Aromaticity Relocation in Perylene Derivatives upon Two-electron Oxidation to Form Anthracene and Phenanthrene

A. Matsumoto, M. Suzuki, H. Hayashi, D. Kuzuhara, J. Yuasa, T. Kawai, N. Aratani,* H. Yamada*

Chem. Eur. J., 2016, 22, 14462–14466. (selected as Frontispiece)

A remarkably strained cyclopyrenylene trimer that undergoes metal-free direct oxygen insertion into the biaryl C–C σ-bond

R. Kurosaki, H. Hayashi, M. Suzuki, J. Jiang, M. Hatanaka, N. Aratani,* H. Yamada*

Chem. Sci., 2019, 10, 6785-6790. (selected as Inside Back Cover)

Torsional chirality generation based on cyclic oligomers constructed from an odd number of pyrenes

R. Kurosaki, M. Suzuki, H. Hayashi, M. Fujiki, N. Aratani,* H. Yamada*

Chem. Commun., 2019, 55, 9618−9621. (selected as Inside Back Cover)

 

近赤外吸収・発光ナノカーボンの戦略的分子設計

ナノカーボン材料の本質的な電子機能を抽出して最小限のユニットで達成し、分子設計にフィードバックする研究テーマのもと、近赤外蛍光性ナノカーボンの開拓を目的として、キサンテン色素の共役拡張に挑戦した。当時のキサンテン色素の長波長化は主にヘテロ元素の置換や置換基導入が主流であり、骨格そのものを拡張しようという試みはほとんどなされていなかった。また、近赤外発光をもつ有機分子は潜在的に不安定であり、大きなBrightness (モル吸光係数 ε x 発光量子収率 ΦFl) をもつ安定な分子の報告例は希少であった。分子サイズの小さいまま長波長発光をもつナノカーボンの合成戦略として、堅牢なフルオロンおよびローダミン骨格でπ共役系を直線方向に高対称のまま拡張し、分子内電荷の非局在化による結合交替の減少によって、800 nmに鋭く強い吸収 (ε = 1.3 x 105 M-1cm-1) および840 nmに蛍光発光量子収率12%の鋭い発光を達成した。

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A laterally π-expanded fluorone dye as an efficient near infrared fluorophore

K. Sezukuri, M. Suzuki, H. Hayashi, D. Kuzuhara, N. Aratani,* H. Yamada*

Chem. Commun., 2016, 52, 4872–4875.

 

フラーレンの“光”機能性開拓

従来その優れた電子受容性から電子材料と見なされてきたフラーレンを、曲面π共役系クロモファーと見立て、これまで注目されてこなかった発光機能を開拓した。C60が通常のπ共役系化合物と同様に電子アクセプターとの連結により電子ドナーとして働くことを証明した。また、同じ反応を利用してキサンテンのC70への位置選択的二重付加を開拓し、キラルC70誘導体をわずか一段階で合成した。深赤色から近赤外領域でC70よりも強い蛍光と、フラーレン類では初めてとなる円偏光発光 (CPL) を観測した。すなわち、従来のフラーレンがもたないキラリティ制御やドナーアクセプター性の逆転などクロモファーとしてのフラーレン共役系の機能変換に成功した。CPLの強度を示す非対称因子g値は690 nm±7.0 x 10-3であり、金属を含まない純粋な有機化合物かつ深赤領域としてはトップレベルの値であることを見出した。

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Buckyball as an Electron Donor in a Dyad of C60 and Xanthene Dye

H. Kano, K. Matsuo, H. Hayashi, K. Kato, A. Yamakata, H. Yamada,* N. Aratani*

Eur. J. Org. Chem., 2021, 3377-3381. (selected as Very Important Paper and Front Cover Picture)

Deep-red circularly polarised luminescent C70 derivatives

H. Kano, H. Hayashi, K. Matsuo, M. Fujiki, H. Yamada,* N. Aratani*

Sci. Rep., 2021, 11, 12072.

 

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