パラジウム(Pd)は、多量の水素を吸蔵する金属として知られており、薄膜化することによって水素分離膜として利用できます。 Pd膜の水素透過原理は溶解拡散機構であり、Pd表面で水素の解離および再結合が行なわれることから、混合気体から水素のみを選択的に分離することができます(図)。
Pd膜の製造には、実用に耐えうる機械的強度と高い水素透過性を付与するため、多孔質アルミナ支持体上にPdの薄膜を形成させる方法があります。 このような薄膜型Pd膜は高い水素透過性が得られるものの、@熱応力に起因するピンホールの発生、A水素脆化に伴う球状剥離、B触媒金属との合金化による貫通孔の形成、 C飛翔物によるPd層の破壊が生じるなど、いくつか課題点があります。

図 溶解拡散機構による水素のパラジウム膜透過機構

■ 細孔内充填型パラジウム膜

当研究室では、これまでに多孔質アルミナ支持体細孔内にPdを充填した水素分離膜の作製に成功しました(図)。 このような膜構造にすることによって、前述の課題点を抑制する効果を期待しています。現在、アンモニアの脱水素を想定した模擬ガスに対して、 細孔内充填型Pd膜の水素分離性能の評価に取り組んでいます。 当研究室で調製したPd膜は、高水準な水素選択性および水素透過性を示しており、大型化およびメンブレンリアクターへの適応を視野に入れて研究に取り組んでいます。

図 多孔質支持体内部にパラジウムを充填した水素分離膜

パラジウム膜の研究開発

環境適応物質学研究室

公益財団法人 地球環境産業技術研究機構(RITE

連携研究室

奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科

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