「ゼオライト」は結晶性の多孔質アルミノ珪酸塩の総称です。 一般的なゼオライトは正四面体四配位のケイ素とアルミニウムが酸素を共有して骨格を形成しており、 アルミニウム部分の電荷均衡を補うためにカチオンを構造内に保有しています。 また、構成元素によって細孔径や親疎水性を制御することが可能であり、 均一なサブナノ細孔を持つことから吸着材料や分離膜部材として利用されています。
■ 耐水蒸気型CO2吸着剤
当研究室では、これまでに構成元素にアルミニウムとカチオンを含まないオールシリカゼオライトを合成し、
各種気体分子の吸着特性を評価しています。一例として、酸素八員環を有するオールシリカのCHA型ゼオライト(Si-CHA)が、
高圧領域でのCO2吸着量が多く、また共存水蒸気の影響を受けないことを明らかにしました。
また、CO2/N2およびCO2/H2の混合ガスからCO2を高選択的に分離可能なことも確認しました(図)。
本吸着剤は、高圧ガスからの圧力スイング吸着(PSA)に適用した場合、吸着操作後に常圧に戻すだけで高濃度なCO2を回収でき、
また、真空ポンプおよび除湿設備が不要となることから、CO2分離回収プロセスの省エネルギー・低コスト化を達成出来ると期待されます。
■ 水素分離用ゼオライト膜
ゼオライトの均一細孔は分子をふるい分ける空間場として活用できます。ゼオライトの骨格構造は約200種類あり、
その中から分離対象に合わせてゼオライト種を選定することで様々な分離系に適用することができます。
分離膜に応用するためには膜欠陥ができないように、ゼオライト結晶を均一かつ緻密に薄膜化させる必要があります(図)。
そのためにはゼオライトの生成メカニズムを理解し、形態制御法を確立させることが必要になります。
当研究室では、メチルシクロヘキサンの脱水素反応から生じる混合ガスから、水素を選択的に分離できるゼオライト膜開発に取り組んでいます。
メチルシクロヘキサンの脱水素反応では、トルエンと水素の混合ガスが得られます。この混合ガスから選択的に水素を分離するためには、
水素分子径とトルエン分子径の間に細孔径を持つゼオライトを膜化する必要があります。現在、最適な構造を有するゼオライト種の選定、
およびその製膜条件を検討しており、水素分離膜としての適用可能性を評価しています。
ゼオライト系材料の研究開発
環境適応物質学研究室
公益財団法人 地球環境産業技術研究機構(RITE)
奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科