研究設備・機器

物質創成科学領域ではこれまで、先端研究を存分に進めることができる研究環境となるよう鋭意整備を進めてきました。特に基盤となる共通設備・機器は、令和5年度よりマテリアル研究プラットフォームセンター(CMP)の教員と技術スタッフがそれぞれ最良の状態で研究活動に提供できるよう整備、運用を担当しています。

マテリアル研究プラットフォームセンター

顕微鏡とTEM試料作製装置 Microscopes and TEM specimen preparation instruments

300kV 透過電子顕微鏡(TEM)

300kV に加速した電子線を試料に照射し、透過した電子線からサブナノメートルの分解能で画像や試料の物性情報を取得する装置です。

200kV 透過電子顕微鏡(TEM)

200kV に加速した電子線を試料に照射し、透過した電子線から高コントラストな画像を取得する装置です。

急速凍結試料作製装置

TEM での観察が難しい液体サンプルを観察可能な凍結サンプルにすることができる装置です。

凍結超薄切片作製装置

サンプルを 50~100nm に超薄切するウルトラミクロトームと軟らかい材料を凍結するための付属装置です。

走査透過電子顕微鏡(STEM)

集束された電子ビームを薄い試料上で走査し、走査線上の各点で試料を透過してきた電子を検出器で受け、その強度をビーム走査と同期したモニターに輝度として表示することで、試料の投影像が得られます。 本装置には球面収差補正装置が搭載されており、原子分解能観察が可能です。

超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)

集束された電子ビームを試料上で走査し、走査線上の各点で放出される2次電子を検出器で受け、その強度をビーム走査と同期したモニターに輝度として表示することで、試料の表面形状像が得られます。 本装置には電界放出形の電子銃、インレンズ形の対物レンズが搭載されており、高分解能観察が可能です。

低真空分析走査電子顕微鏡(LV-SEM)

電子線を試料に照射し、画像や試料の物性情報を取得できる装置です。低真空機能、EDX,EBSDが可能です。

集束イオンビーム装置(FIB)

集束されたガリウムイオンビームを試料上で走査することで、試料の微細加工、2次電子を検出することによる試料表面の観察、ガスを用いてカーボンやタングステンの局所的デポジションができる装置です。 (S)TEMの観察用試料作製に用いられます。

走査プローブ顕微鏡(SPM)

鋭い探針で試料表面を走査し、試料表面の形状を観察したり、物性を測定したりできる装置です。原子間力顕微鏡(AFM)や摩擦力顕微鏡(FFM)など、いくつか観察手法を選択できます。

質量分析装置 Mass spectrometers

LC-TOF/MS高分解能飛行時間型質量分析計

HPLCから質量分析装置へ導入できる高分解能LC/MSです。使用可能イオン化法はESI,APCI,CSI,DART法。DART法は前処理なしで直接分析や、TLCスポットをそのまま測定することが可能です。有機金属錯体や自己組織化超分子などを得意とする質量分析装置です。

MALDI/SpiralTOF型超高分解能質量分析計

SpiralTOFイオン光学系を採用した超高分解能・高感度MALDI-TOFMSです。有機合成物から合成高分子、ポリマー測定などを得意とする質量分析装置です。

MALDI/TOF型質量分析計

リニアーモードとリフレクトロンモードを搭載するMALDI-TOF/MSです。有機中分子合成物から高分子タンパク質測定などを得意とする質量分析装置です。

DART専用四重極型質量分析計

様々な形態・状態の試料を、前処理無しで、DART イオン源にかざすだけで測定することができる四重極型質量分析計です。

二重収束質量分析計

GCから質量分析計へ導入できるGC/MSとDirectプローブによる直接分析の2種の導入法を有する高分解能質量分析装置です。使用できるイオン化法はEI,CI,FAB法です。

X線回折装置 X-ray diffraction instruments

X線構造解析装置

粉末・薄膜・液体に対し様々な結晶構造分析を行うことのできるガイダンス機能を搭載した全自動多目的X線回折装置です。

高輝度X線小角散乱装置

10度以下の低角領域の散乱から粒子や巨大分子のメゾスケール構造を解析するX線装置です。

微小結晶X線構造解析装置

0.1㎜程の微小な単結晶中の原子や分子の最も精密な立体構造を解析するX線回折装置です。

核磁気共鳴装置・電子スピン共鳴装置 Nuclear magnetic resonance and electron spin resonance instruments

600MHz,500MHz,固体400MHz超伝導核磁気共鳴装置(NMR)

強磁場超伝導マグネットを用いた核磁気共鳴法により、分子構造および物性の解析を行います。溶液測定専用機が2台(600MHz・500MHz)、溶液・固体測定兼用機が1台(固体400MHz)設置されています。

電子スピン共鳴装置(ESR)

ESR は、電子スピン共鳴法により常磁性物質を選択的に検出する測定法です。 磁気モーメントの大きさ、電子スピン・核スピンとの相互作用により、反応性・運動性・構造に関する情報が得られます。

表面分析装置 Surface analysis instruments

多機能走査型X線光電子分光分析装置

試料にX線を照射し、放出される光電子の強度を運動エネルギーごとに計測します。試料中に含まれる元素の種類、割合、化学状態などを分析する装置です。

電子線マイクロアナライザー

電子線を対象物に照射する事により、発生する特性X線の波長と強度から構成元素を分析する電子マイクロプローブ装置です。最大5元素を同時に測定し分析できます。

光学測定装置 Optical measurement instruments

顕微レーザーラマン分光光度計

試料に可視レーザー光を照射し、ラマン散乱光を検出します。試料の分子振動、格子振動などの固有振動数を測定でき、試料の同定や物理化学的状態を分析する装置です。

円二色性分散計(CD)J820

円二色性は、光学活性物質の吸収波長領域において左右円偏光の吸収の度合いが異なる現象で、これを測定することで立体配座や相互作用の変化が検出可能です。

分光エリプソメーター

直線偏光の光を試料に照射し、入射光に対する反射光の偏光の変化を波長ごとに測定する装置です。 実験で得られたスペクトルと、試料を理想化したモデルによって計算で得られたスペクトルの誤差が最小となるようにフィッティング解析することで、薄膜の膜厚や複素屈折率が得られます。

元素分析装置 Elemental analysis instruments

全自動元素分析装置(EA)

化合物内の炭素・水素・窒素の含有率を燃焼分解により正確に分析する装置です。 有機物だけでなく無機物試料、液体試料の測定も可能です。

誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)

ICP(誘導結合プラズマ)をイオン源とする質量分析装置です。 あらかじめ濃度が判明している試料溶液を参照することにより、サンプル溶液中の元素濃度を高感度で測定することができます。

物性測定装置 Physical properties measurement instruments

物理特性測定装置

試料の電気抵抗、比熱、熱伝導率、ゼーベック係数とそれらの温度依存性を測定する装置です。

大気中光電子分光装置(PYS)

仕事関数・イオン化ポテンシャルを大気中において広エネルギー範囲(4~7eV)で測定できます。真空中に持ち込めない粉末・液体試料の測定も可能です。

示差走査熱量計・示差熱熱重量同時測定装置(DSC・TG-DTA)

各種材料の温度変化に伴う経時変化や、融点や沸点、ガラス転移点などの物理量を測定できる装置です。示差走査熱量計は熱流束型、示差熱熱重量同時測定装置はデジタル水平作動型です。

内部量子効率測定装置

波長依存性のない定エネルギー、定フォトンの単色光を太陽電池に照射し、各種太陽電池の分光感度特性、量子効率を測定する装置です。

微小デバイス特性評価装置

半導体デバイス内部配線、材料、電子部品の電気特性測定と電子ビーム吸収電流解析ができるSEM式プロービングシステムです。

クリーンルーム Clean room

高純度金属スパッタ装置

この装置は、スパッタリング法により、基板の表面に付着・堆積させ薄膜を形成するものです。

複合酸化物薄膜形成装置

この装置は、スパッタリング法により、基板の表面に付着・堆積させ薄膜を形成するものです。酸素、窒素を流しながら成膜できます。

TFE電子ビーム描画装置

電子線を用いて直接描画できる装置です。最大加速電圧50kVで、10nm程度のパターンを描画できます。

微細形状測定機

ET200は、測定力を調整することで柔らかい試料面にも対応し、ナノレベルの微細形状を高精度に測定・解析することができます。

クリーンルームの概要
共通利用のクリーンルームです。大気中に存在するゴミ・ホコリを超高性能フィルタで取りのぞいて清浄雰囲気下で物質の創成ができます。クリーン度はCLASS 1000ですが、特にクリーン度を要求されるイエロールーム等はCLASS100を実現しています。
設置の目的・研究の内容
新機能物質の研究開発
優れた研究者・技術者を育成する教育研究施設

研究工程

半導体の工程を大きく3つに分けると
  1. マスク製作工程
  2. ウェハ製作工程
  3. アセンブリ工程
となり、実際にこのクリーンルームではウェハ製作工程を行っております。
クリーンルームとは
クリーンルーム
クリーンルームとは、HEPAフィルターを通した清浄な空気を循環させることにより、埃の数をに減らした特殊な部屋のことで、半導体集積回路の製作などにはなくてはならない施設です。実際の埃の量は、1立方フィート(約28.3リットル)中に何個埃があるかを基準としますと、本大学クリーンルームには、 0.5μmの埃が1000個以内しかない部屋(クラス1000)、 100個以内しかない部屋(クラス100)があります。(普通の街中のクリーン度を例として挙げてみますと、クラス数百万ということになります。)ちなみに、0.5μmの大きさはどのくらいかといいますと、花粉で数10μm、通常の菌で数μmですので、クリー ンルーム内では花粉症、伝染病等に感染しにくくなります。 (右図:クリーンルーム内部)

イエロールーム・リソグラフィ室とは
イエロールーム・リソグラフィ室
イエロールーム・リソグラフィ室は、レジスト塗布、マスクの位置合せ、露光、現像と通常の写真に近い作業を行う部屋です。写真の場合、フィルムに可視光線で感光しますが、半導体の場合、マスクのパターンをウェハー上に投影 (感光)するのに水銀ランプのg線(436nm)かi線(365nm) (最近ではKrFエキシマレーザー(248nm))が使われます。そのときに外部から光が入っても感光しないように、外部からの光(蛍光灯や窓)に黄色のフィルターをかけて、 それらの波長が出ないようにしているためです。 (一般的に可視光線は380~780nm) (写真:イエロールーム内部)

高圧実験室
高圧実験室は、F棟の2階にあり、主に特殊高圧ガスを使用する実験(マスク製作、酸化・拡散工程)を行っております。(クラス1000)また、1階クリーンルームと高圧実験室にはダムウェーターが設置してあり、容易に試料等をやり取りできるようにしてあります。 ※特殊高圧ガス:モノシラン、ホスフィン、アルシン、ジボラン、セレン化水素、 モノゲルマン、ジシラン
設置機器
マスクアライナ
スピンコーター
MOCVD装置
表面改質装置
安全管理について
クリーンルームは、閉ざされた空間であり、特殊なガスなどを使用する関係上、安全管理が重要となります。本大学では緊急時に、施設の利用者の有無が一目で 分かるようなICカードを使用したシステムで管理しております。 また、施設にはカメラが設置されており、死角がなくなるようにしております。
クリーンルームの仕様
クリーンルーム イエロールーム リソグラフィ室 高圧実験室
部屋の位置 F棟1階 F棟1階 F棟1階 F棟2階
面積(m3) 156 51 23 94
天井の高さ(m) 2.6 2.6 2.6 2.6
清浄度 (連邦規格) クラス1000 クラス100 クラス100 クラス100
空調方式 垂直層流方式 垂直層流方式 垂直層流方式 乱流方式
室内床仕上 アルミパネル (二重床) アルミパネル (二重床) アルミパネル (二重床) アルミパネル (二重床)
室内壁仕上 アルミパネル アルミパネル アルミパネル アルミパネル
室内天井仕上 アルミパネル アルミパネル アルミパネル アルミパネル
見学者用廊下からみたクリーンルーム内部です。
共通利用のマルチターゲットスパッタ、蒸着装置です。他にも、色々な共通利用の装置が立ち上がる予定です。

マテリアル先端リサーチインフラ(ARIM)事業

学外の研究者にも設備を公開する制度であるマテリアル先端リサーチインフラ(ARIM)事業については、以下のリンク先をご覧下さい。 ARIM