細胞間の接着力測定

フェムト秒レーザー誘起衝撃力を利用して、細胞間の接着力を測定

細胞間の接着は、生体の成り立ち、生体内での情報伝達、癌や移植組織の浸潤などを解明する上での本質的な問題です。しかしながら、これまで生体内に存在する種々の形態をとる細胞間の接着を、同一基準で評価することは難しく、細胞間接着の一般的な理解の妨げとなっていました。我々は、レーザー技術を駆使することにより、従来概念を覆す1細胞レベルの細胞間接着力の非接触計測技術の確立に成功しました。この技術は、レーザーを利用しているにも関わらず、レーザーが細胞に直接接触しない新奇なアイディアにより実現されました。計測において機械部品等が細胞に接触することはなく、細胞の培養条件を乱すことはありません。

生体内の条件に似せた細胞の培養条件は繊細であり、わずかな環境変化によってでも、細胞構造や細胞間の接着力が乱されます。本技術は、接着力評価のために試料に導入されるのは光のみであり、また測定は瞬時に行えるため、細胞への環境負荷は他の方法に比べて遙かにすくないことが特徴です。我々は、血管内でおこる血管細胞と白血球の接着や皮膚組織でみられる上皮細胞の接着を顕微鏡下で再現し、本手法を用いることにより、全く異なる接着形態をとる両者の接着を同じ基準で評価することに初めて成功しました。

<図1>
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<図1>Femtosecond laser-induced intercellular dissociation of leukocyte attached to endothelial cell monolayer. Red dots in right images indicate laser focal point.

<図2>
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<図2>Femtosecond laser-induced intercellular dissociation of MDCK cell-cell interface. Red points indicate laser focal point.



共同研究:伊藤彰彦先生(近畿大学医学部病理学講座)

Yoichiroh Hosokawa, Mitsuru Hagiyama, Takanori Iino, Yoshinori Murakami, Akihiko Ito, "Non-contact Estimation of Intercellular Breaking Force Using Femtosecond Laser Impulse Quantified by Atomic Force Microscopy," Proc. Natl. Acad. Sci., vol.108, pp1777-1782.(2011)

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