研究紹介

フェムト秒レーザーを用いた蛋白質ダイナミクスの解析

蛋白質は大きな自由度を持った分子です。例えば、アミノ酸残基数149のStaphylococcal Nucleaseは原子数が2,387であるため、3×2,387–6=7,155の自由度を持ちます。これだけの自由度を持っている蛋白質分子は、ひとつの分子であってもとても複雑な運動をして(揺らいで)います。さらに、水溶液中では無数の水分子が蛋白質と相互作用するため、蛋白質の運動は確率的になり、予測が困難になります。しかしその一方で、蛋白質は決められた方向に構造変化をして機能を発現します。蛋白質の揺らぎがどのように制御されているのかを調べることは、蛋白質がはたらくしくみを理解するために重要です。


蛋白質(青色)と周辺の水(白色)は相互作用しながら揺らいでいます。

蛋白質の揺らぎは、速いもので10-15秒、遅いもので秒以上と広範な時間領域で観測されます。揺らぎを観測するのに最適な測定手法は、注目する時間領域によって異なります。当研究室では、10-12秒の揺らぎを調べるためにテラヘルツ時間領域分光法を用いています。10-12秒の時間領域では蛋白質だけでなく水分子も一緒に揺らいでいるため、蛋白質と水分子の相互作用を調べることができます。


構築中のテラヘルツ時間領域分光装置。フェムト秒パルスレーザー(研究科の共通機器)を利用し、テラヘルツ領域のダイナミクスを観測できる装置を開発中。