研究紹介

蛋白質分子集団が示す動的秩序の解析


蛋白質集団は自律的な集合離散を繰り返すことによって高度な機能を実現しています。蛋白質が示す機能性を分子レベルで理解するためには、多種多様な蛋白質が共存する環境で、個々の蛋白質の状態変化や蛋白質間の相互作用の変調を解析する必要があります。本研究室では、従来法では困難だった、多成分平衡状態を解析する新規手法を開発することによって、情報伝達システム、蛋白質輸送システム、神経軸索伸張システム等の創薬のターゲットとなり得る分子集団が示す分子機構の理解を進めています。

新規分子複合系材料の開発

シルク等の天然由来の機能性材料も、その構成要素は蛋白質です。天然のシルクでさえ、未だ人工合成材料では越えられない特性を兼ね備えています。さらに、蛋白質はアミノ酸配列を改変することで機能改良が可能であるため、人工的に改変したシルク蛋白質は次世代材料として期待されています。本研究室では、蛋白質分子複合系が示す自己組織化能に着目し、素過程を理解し応用することで、天然を超える新規蛋白質分子複合系材料の開発を実現します。

蛋白質の動作機構の解明と人工蛋白質の創成

蛋白質集団が示す動的秩序や自己組織化的な分子会合は、構成要素である個々の蛋白質の動作によって制御されています。特に、蛋白質分子内で生じるプロトン移動は蛋白質の構造転移を引き起こす主要な因子と考えられており、その意味で蛋白質は一種のプロトニクスデバイス(図4)と言えます。本研究室では、蛋白質の動作機構を明らかにすると同時に、動作する人工蛋白質の創成法の実現を目指しています。