生体プロセス工学研究室について

細川陽一郎教授が主催する当研究室では、最先端レーザー技術と顕微鏡技術を駆使した、細胞やタンパク質などのバイオ試料の超微細・超高速操作技術の開発と研究を推進しています。特に、超短パルスレーザー(フェムト秒レーザー)を利用した細胞の操作・加工技術では、世界最高レベルの研究施設と研究実績を有しています。

超短パルスレーザーを駆使した新しい細胞操作・計測方法の開発

光波の振幅数を数えられるくらいの時間に光を集中させた超短パルスレーザーを顕微鏡下で集光すると、光エネルギーを時間・空間的に極限にまで集中させた状態が達成されます。
この濃縮された光エネルギーを細胞や細胞培養液に作用させると、ミクロンオーダーの集光点で爆発現象が誘起され、微小空間に強い衝撃波が発生します。
この衝撃波を細胞に衝撃力として作用させることにより、細胞を1つずつ操作したり、細胞同士の接着力を測定したり、1細胞へ遺伝子を導入したりすることに成功しています。さらに、これまで難しかった1細胞への力学的な刺激にも成功しています。
これらの細胞操作・計測技術は世界的に斬新なアイディアであり、多くの生物・医学分野の研究者と連携して、方法論の開発を進めています。

細胞・生体組織のもつ環境感覚の探索

生物組織の形態形成において、蛋白質・細胞・組織の構造変化のダイナミクス(動力学)は、本質的な問題です。
近年では、これらのダイナミクスと生体機能創発の関係が注目されており、“メカノバイオロジー”という新しい研究分野が創設されています。
当研究室では、レーザー誘起衝撃力を利用した上記の方法を駆使することにより、植物細胞や動物細胞の環境適応感覚をメカノバイオロジーの観点から理解しようとします。
特に、動かないという選択をして生きている植物は、力、光、温度、水分などの刺激を感知し、生理機能や形態を柔軟に変化させることで環境適応し、自己の生存を図っています。
この様な植物さらには動物の環境適応感覚を理解することで、環境、エネルギー、資源問題を見据えた将来の工学研究を探索します。